イラストレーターの服部ともあき ナースの一言
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糖尿病だってドラマであるの巻

糖尿病だってドラマであるの巻

2008年11月は、保健師チップチが担当します。

「ガンはドラマになる病気、糖尿病はドラマにならない病気」
そんなふうに形容されることがあります。

事実、ガンと闘うヒトのドラマはよくあるけれど、糖尿病と闘うヒトのドラマって…見たことない。
まぁ、糖尿病の場合「闘う」って感じではなく「付き合う」って感じなんですけど。

でも、付き合うっていっても、相思相愛の恋愛関係みたいなものじゃないわけで。
糖尿病のヒトはいろんな思いを抱えて、病気と付き合っています。

★プロローグ★

私が糖尿病のヒトに興味を持ったのは、ちょっとした罪悪感からでした。

ある日、糖尿病が進行し、腎不全になり、透析をしているおじさんが入院してきました。
大抵糖尿病の合併症は、神経障害→網膜症(眼の病気)→腎症と発症。
おじさんはすでに失明している状態でした。

週3回の透析のためにベッドを離れる以外は、ほとんどを寝て過ごし、話し掛けても返事をする程度。
無関心・無表情・無感情、手の掛からない患者といえば全くそうで、放置されているようなものでした。

「眼が見えないので、ごはんの上におかずを全部載せて食べさせて」と奥さんからナースに指示がありました。
そうしないと上手く食べられないし、家でもそうしているというのが理由でした。

そう言われれば、多忙な病棟ナースとしては、そうさせてもらいます。
(だって楽ちんだもん♪)

しかし、そうやってごはんを食べているおじさんの後ろ姿を見て、ものすごい罪悪感に駆られ、申し訳ないことをしているように思ったのです。

何も言わないけれど、何か言いたいことがあるんじゃないのか。
本当はこんなこと、したくなんかないんじゃないのか。

でも、結局おじさんには、何も聞けずに終わりました。
(あの頃、私も若かった)

私と同い年の糖尿病のお兄さんが入退院を繰り返していました。
最初に出会った頃は、意気盛んで、ちょっとくらい血糖値が高くても、お酒は気にせず飲むは食うはという生活。
(おまけにナースに手を出していた)

しかし、彼も徐々に糖尿病が進行し、視力が低下し、腎臓の機能も落ちていきました。
それと同じように、精神的にも落ち込んでいきました。

抑うつ的になり、引きこもるようになりました。
どこかに出掛けようと地下鉄に乗ると、急に胸が苦しくなり、激しい動悸に襲われるようになりました。
心療内科を受診すると、うつ病+パニック症候群と診断されました。

2人以外にも、糖尿病が進行し、合併症をもったヒトに出会ったけれど、みんな同じようにココロに何かを抱えてしまっているようでした。
何故だろう…そんな疑問が湧きました。

その疑問をはっきりと自覚したのは、腎臓の病気で腎不全になり、透析をしているおじさんとの出会いのおかげ。
このおじさんは、糖尿病とは全く関係のない病気で透析をしていましたが、透析をしているという状況は同じなのに、とっても元気はつらつ。

どうして糖尿病のヒトとこんなにも違うんだろう。
なにか糖尿病を患うことで、体験したり、考えたりすることがあるんじゃないのか?

歳を重ね、幸いにも機会に恵まれたため、私は大学院へ進学し、この疑問について調べました。
糖尿病になり合併症をもったヒト10人から、いろいろな話を聞きました。

「ガンはドラマになる病気、糖尿病はドラマにならない病気」

「ガンになった」と友達が話してきたら?
多分、可哀想にって同情し、心配する。
でも「糖尿病になった」って話してきたら?

現在、糖尿病である可能性の高いヒトは、40歳以上で10人に1人いると言われています。
糖尿病のヒトがどんな複雑な思いを抱えているのか、それを知ったら、ちょっと役に立つかもしれません。

数回に分けて、私が約10ヵ月掛けて調べたこと&考えたことを一言として(一言では無理だけど)書いてみます♪

(12月につづく)
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©イラストレーター服部ともあき